人はなぜ他人を助けるのを躊躇してしまうのか?

こんにちは。コミュテラスの西垣です。

この記事を書いている西垣の略歴
  • 大手・中小・外資系企業で人事歴20年
  • 5つのコミュニケーション資格を所持
  • 現在はコーチ・コンサルタント業に従事

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このページでは
「人助けの心理」をテーマに
お話ししていこうと思います。

幸福感を感じるにはどうしたら良いか?
のページで詳しく説明していますが、

人間は他人を助ける行動をすると
脳内にオキシトシンやエンドルフィンなどの
「幸せホルモン」が分泌され、
幸福感を感じるようになっています。

つまり、人助けの行動は
困っていて助けられる人はもちろん、
援助する人にもメリットがあり、

私たちは街中のいろいろな場面で
他人に親切にしている人を見かけます。

ですが、その一方で、
電車に杖をついたお年寄りが乗ってきても
誰も席を譲ろうとしなかったり、

道端にうずくまっている人がいても
声をかけずに素通りしたりと

いかにも助けが必要そうな場面にも関わらず
誰も援助しようとせず
放っておいてしまうこともあったりします。

人助けには、助ける側と助けられる側の
双方にメリットがあるはずなのに、

そうした場面で誰も助けようとしないのは
不思議ですよね。

人間が他人を助けたり、
逆に助けてもらったりする時には
どのような心理が働いているのでしょうか?

一緒に見ていきましょう。

人助けをする際の心理的な過程

人間が人助けをする際には
次の3つの段階を経て行動に移されます。

①困っている人を視界に捉え、
援助が必要だということを認識する

②援助することによって、
自分にどの程度の労力や責任が
かかってくるかを検討する

③どのように援助をするかを考えて、
実際に行動に移る

そして、②の段階で
自分にかかってくる労力や責任が
大きいと判断すると
実際に行動に移すのを躊躇します。

たとえば、駅の階段で
大きな荷物を持っているお年寄りが
途方に暮れているのを見たとしても、

自分の手がいっぱいで
これ以上荷物を持つのが難しかったり、

助けていると電車に乗り遅れて
大事なアポに遅れてしまいそうな場合には
援助するのをためらったりします。

このように、人間が人助けをする際には
自分が援助することによってかかってくる
コストや責任などを検討して、

実際に行動に移すべきかどうかを
判断しているのです。

助けられる人の心理

次に、助けられる側の人の心理を
見ていきたいと思います。

人間は困った状況になっても
他人に助けを求めるのを躊躇する
傾向があります。

どうして困っているのに
助けを求めるのを躊躇するのかと言うと、

誰かに助けてもらうと
「相手にお返しをしなければならない」
という気持ちが生じるからです。

この相手に対する「借り」の気持ちを
「心理的負債」と言います。

「ギブ・アンド・テイク」という
言葉があるように、

人間の心理には、
他人から何かをしてもらったら
お返しをしなくては申し訳ないと感じる
「返報性の原理」があり、

誰から援助をしてもらうと
その人に対して返報を義務づけられる
心境になってしまうため、

この心理的負債を負いたくなくて
人に助けを求めるのを躊躇するわけです。

また、自尊心の存在も
他人に助けを求めるのをためらわせる
一つの要因とされています。

人に助けを求めるということは
「自分には問題を解決する能力がない」
ということを自分自身が認め、
それを他者にも伝えることになります。

これは自己評価を高く維持しようとする
自己高揚動機に反する行為で
自尊心を傷つけることになりますから

他人に助けを求めることに
心理的な抵抗を感じるわけです。

このように助けられる側にも
自ら助けを求めることをためらわせる
心理傾向があり、

このことも日常生活の中で
人助けが起こりづらい一因になっています。

傍観者効果とは何か?

そして、私たち人間は
周りに人がいると援助行動をしづらくなる
心理傾向があります。

これは集団心理学で
「傍観者効果」と呼ばれるもので、

傍観者効果が生じる要因には
以下の3つがあるとされています。

責任の分散

周りの人に合わせることで
責任が分散されると考えて行動しないこと。

例:電車に杖を持った老人が乗ってきたが、
周りの誰も席を譲ろうとしないので
自分も席を譲る必要はないだろう。

多元的無知

周りの人が何もしていないことから
緊急性がないと判断して行動しないこと。

例:道端にうずくまっている人がいるが
周りの人は気にせず歩いているから
たぶん大したことでないのだろう。

評価懸念

行動を起こすことで、周りから下される
自分への評価を恐れて行動しないこと。

例:重い荷物を持っている老人がいるが、
代わりに持ってあげたら、周りから
「親切ぶってる」と思われるかもしれない。

 

「責任の分散」「多元的無知」「評価懸念」
これらの心理的な要因によって、

人間は他者に援助すべき状況があっても、
周囲にいる人が多ければ多くなるほど
援助行動が抑制される傾向があります。

まとめ

以上、人間が他人を助けたり、
助けてもらったりする時の心理について
いろいろと見てきました。

人助けは、助ける側にも
助けられる側にもメリットがある
良いことづくめの行為にも関わらず

助けが必要とされる場面で
援助行動が起こらないことがあるのは

社会的動物である人間ならではの
独特の心理傾向が影響していることが
お分かりいただけたかと思います。

とはいえ、
人間には他人の援助行動を見ることで、
援助行動が促進される傾向があります。

ですので、困っている人を見かけた時に
心理的な抵抗に流されず
勇気を持って援助行動に踏み込むことは

自分自身が幸福感を感じられるのと同時に
周囲にも援助の連鎖をもたらす
とても意義のある行動だと言えます。