集団心理とは何か?同調圧力や思考のワナを考察

こんにちは。コミュテラスの西垣です。

この記事を書いている西垣の略歴
  • 大手・中小・外資系企業で人事歴20年
  • 5つのコミュニケーション資格を所持
  • 現在はコーチ・コンサルタント業に従事

私のプロフィール取得資格一覧

このページでは
「集団心理」について
お話ししていこうと思います。

ヒトは太古の昔から
集団を作って生活をする社会的動物で、

現代に生きる私たちも
日々いろいろな人と関わりながら
集団の中で生活しています。

どうして人間が
集団で生活をするのかというと、

他の人と協力したり
支え合ったりして生活した方が
生きていく上で安全で効率的だからですが、

集団での生活は
必ずしも良い面ばかりではありません。

人間は集団の中に入ると、
個人とはまったく違う心理状態になり、

いじめや差別などのような
集団特有の人間関係のトラブルが起きたり、

時には、集団全体が
思いもよらぬ極端な方向に暴走してしまう
こともありします。

「集団」は、人間の心理に
どのような影響を与えているのでしょうか?

一緒に見ていきましょう。

同調圧力によって「黒い羊」が生まれる

会社のミーティングなどで
自分の思っていることが
周りの人たちの意見と違っていても、

自分の意見を言わずに
周りに合わせて黙っていたりすることって
よくありますよね。

人は集団の中にいると
「周りの人と同じでいたい」と思ったり、

多くの人が支持するものが正しいと
思い込みやすい傾向があります。

そのため、周囲の意見と
自分の考えが違っていると不安を感じ、
ついつい周りに合わせてしまいます。

これは集団の中で孤立するのを避け、
自分の居場所を確保しようとする反応で、
このような心理を「同調」と言います。

そして、集団の中に
周りと異なる意見を言ったり
違う行動をしたりするメンバーがいると、

集団内の人々はそのメンバーに対して
違和感や不快感を抱き、

大多数の動きに同調するよう働きかけたり
心理的に拘束したりします。

このような心理を
「集団圧力」または「同調圧力」と言い、

それでも圧力に屈せず
同調しないメンバーがいると、

周りの人々は一致団結して
そのメンバーを孤立化させたり、
排除しようとする行動をとったりします。

こういった
集団内に同調圧力が働いている場面って、

誰でも一度や二度は経験したり、
心当たりがあったりするのでは
ないでしょうか?

たとえば、学校や職場などで
一人が厄介者として扱われ、
無視されたり、嫌がらせを受けたりする。

そして、それによって
周りの人たちには連帯感や一体感が生まれ、
より一層仲間意識が強まる。

イヤな話ですが、人間は集団になると
こうした行動をとる傾向があり、

集団心理学では
「黒い羊効果」と呼ばれたりします。

『黒い羊』という言葉は
アイドルグループ欅坂46の
歌のタイトルにも使われているそうなので
ご存知の方も多いかもしれませんが、

英語で「黒い羊(Black sheep)」は
「のけ者」「厄介者」という意味で、

白い羊の群れの中に
一匹だけ混じっている黒い羊が
仲間と認められずに排除されるという
聖書の故事に由来しています。

私は長年にわたって
人事総務部門で仕事をしてきましたので、

こうした「黒い羊」を
社内で何度となく目にしてきました。

特に外資系企業では、
課長や部長などマネージャークラスの
ポジションに欠員が出た場合、

社内の誰かを昇進させるよりも、
他社から同等の経験を持つ者を引き抜いて
補充することが多いので、
黒い羊が発生しやすかったりします。

そもそも中途入社の社員は
それだけで黒い羊になりやすいのですが、

それがマネージャークラスの採用で、
元からいる同世代の社員たちの
上司になるようなケースは要注意で

人事担当者としては
かなり気にして様子を窺っていました。

というのも、
マネージャークラスで中途採用される人は
基本的に優秀で他社での実績もあり、
会社から即戦力として期待されているので、

最初からリーダーシップを発揮して
その部署の抱える問題点や仕事の進め方を
改善しようとしたりします。

けれども、以前からその部署にいて
現状のやり方に慣れている社員にとって

その新しい上司の仕事ぶりは
迷惑で鬱陶しいだけですから、

もともと感じていた嫉妬心も相まって
その新任マネージャーに対して
反発心を抱くようになり

「あの人はウチの会社のことを
何も分かっていない」などと
周りの同僚に不満を言うようになります。

そういった不満を言い出すのは
大抵その部署での勤務歴が長く、
実務を取り仕切っている社員ですから、

周りの他のメンバーも
次第にその古参の社員の意見に
同調するようになり、

皆で新任マネージャーの指示を
無視するようになったり、

さらに酷くなると、
業務で必要な重要情報をあえて知らせず
新しい上司が失敗するように仕向け、

「新しいマネージャーはダメだ」などと
他部署の社員に吹聴してまわったりと

より陰湿な嫌がらせをするように
なったりします。

このように、
人間は集団になると同調圧力が働いて、
異質な「黒い羊」を排除しようとする
傾向があります。

「黒い羊」にされてしまうと、
上記の例のように
その人の言動が正しいか間違っているかに
関係なく排除されてしまうので、

たとえ正しい意見だったとしても
集団内で孤立するのを恐れて
意見を変えてしまう人が多くなります。

集団思考とはどういうものか?

次に、集団で討論する際に陥りがちな
「集団思考のワナ」について
見ていきたいと思います。

昔から「三人寄れば文殊の知恵」という
ことわざがあるように、

一人で考えるよりも
何人かで集まって相談した方が
良い知恵が生まれることは多いですが、

集団で話し合って決めた内容の方が
個人で決めた内容よりも優れているとは
必ずしも限らなかったりします。

と言うのも、集団での討論では、

その場の雰囲気を壊したり、
下手に発言して責任を負わされたくない
という心理が働いて

重大な問題点が見過ごされたり
結論が極端な方向にずれていってしまう
傾向があるからです。

これは「集団思考」の中でも
「集団極性化」と呼ばれる現象で、

集団で討論を行うと
以下の2つの両極端な方向に
結論が導かれやすくなるとされています。

①リスキーシフト

自分たちが間違っているはずがないという
自信過剰な心理状態に陥り、

都合の悪い情報を軽視したり
異なる意見を排除するようになって

極端に危険度の高い方向に
結論が導かれることを指します。

ワンマン社長が周りにイエスマンを集めて
放漫経営を行い、破綻するケースなどが
リスキーシフトの例です。

②コーシャスシフト

できるだけ責任を回避したいという
消極的な心理状態に陥り、

チャレンジ精神を失って
安定志向で無難な選択をするようになり

極端に安全で保守的な方向に
結論が導かれることを指します。

業績が悪化しているにも関わらず
社内会議で誰も改善案を出そうとせず、
前例主義で物事を決めるケースなどが
コーシャスシフトの例です。

 

このように、職場の会議など
集団で話し合いをする場面では

知らず知らずの内に
結論が極端な方向にずれていってしまう
傾向があります。

特にその集団が外部から隔絶されて
十分な情報を得ることができない状況で
メンバーに強いストレスがかかり、

そこに強い指導性を持つリーダーが
いるようなケースでは

集団全体が間違った方向に導かれる
危険性が高くなります。

まとめ

以上、集団が
人間の心理に与える影響について
考察してきました。

一般に「集団心理」という言葉は
ネガティブな意味で使われることが多く、

このページでも
「同調圧力」や「集団思考」といった
悪い面について説明してまいりましたが、

活用の仕方によっては
実は良い面もあったりします。

たとえば、人間は集団で作業をすると、
同じ仕事をする他者の存在が刺激となって

一人でやるよりも
作業効率が高まる傾向(社会的促進)が
ありますし、

また、人間は集団になると
恥ずかしさが薄れて大胆になる傾向が
ありますから、

街頭での募金集めなどの
慈善活動が心理的にやりやすくなるという
メリットもあったりします。

このように集団心理は
社会的動物である人間に深く根付いている
本能的な心理傾向ですので、

同調圧力や集団思考のような
ネガティブな面があることを理解して
注意しつつ、

ポジティブな面を活用していくことが
大切だと思います。