感情はなぜあるのか?役割やコントロール法を考察

こんにちは。コミュテラスの西垣です。

この記事を書いている西垣の略歴
  • 大手・中小・外資系企業で人事歴20年
  • 5つのコミュニケーション資格を所持
  • 現在はコーチ・コンサルタント業に従事

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このページでは
「人間の感情」について
お話ししていこうと思います。

「喜怒哀楽」という言葉があるように
人間にはいろんな感情がありますよね。

「喜び」や「楽しみ」のような
ポジティブな気分になることもあれば、

「怒り」や「悲しみ」といった
ネガティブな気持ちになることもあるなど

私たちは日々、
心の中に様々な感情を抱きながら
生活しています。

ですが、最近の日本では
感情を表に出すのを良しとしない風潮が
あるように思います。

たとえば、自分の気持ちを
表情や態度に出すタイプの人は

「喜怒哀楽が激しい人」とか
「すぐ感情的になる人」などと言われ

幼稚な人とか、知性の低い人と
捉えられる傾向があったりします。

このように現代では、
感情はあまり良いものとされず、

余計なものとか抑えるべきものとして
マイナスのイメージで
捉えられることが少なくありません。

では、なぜ私たち人間には
感情というものがあるのでしょうか?

その役割や種類、
コントロールの仕方について
一緒に見ていきましょう。

感情は何のためにある?

もし、あなたが青信号で
横断歩道を渡っているところに

車が猛スピードで向かってきたら
あなたはどうするでしょうか?

おそらく
「こっちが青信号なのに…」などと
考えたりする前に、

恐怖を感じて体が咄嗟に動き、
逃げていると思います。

私たちは強い感情を抱くと
それまでしていた行動を中断して、

その感情を生じさせた原因に
意識を集中させるようにできています。

上記の例で言えば、
猛スピードの車が迫ってくるのを見て
「恐怖」という強い感情を抱き、

身の危険を守るために
慌ててその場から逃げたというわけです。

この恐怖という情動は
最も原始的な感情の一つとされていて、

私たちの遠い祖先が
自分たちを食べようと襲いかかってくる
肉食獣を見た時などのような

生きるか死ぬかの非常時に
すぐに行動が取れるように生まれたものと
考えられています。

恐怖を感じると脳内に
アドレナリンやノルアドレナリンなどの
神経伝達物質が分泌され、

血圧や心拍数を上昇させて
全身の筋肉に血液を行き渡らさせ、

即座に逃げたり、
戦ったりする体勢を整えるのです。

このように感情には
理性的な思考を一旦停止させて、

その感情が求める行動を
最優先に行わせる機能があります。

そのため、強い感情を抱いて
情動に突き動かされた行動をすると

知性が低く、幼稚な振る舞いに
見えてしまうこともありますが、

自分の身に危険が迫った時に
瞬時に必要な行動を起こさせるという
重要な役割を果たしているのです。

また、その他にも
感情は他者とのコミュニケーションで
大きな役割をしています。

たとえば、人は嬉しい感情を抱くと
自然と笑顔になるものですが、

笑顔を見せることは
相手に好感を持っているサインとなり、
良好な人間関係を築くのに役立ちますし

逆に、怒った表情を見せれば
自分が不快に感じていることを
相手に伝えるサインとなり、

殴り合いなど激しい衝突が起こるのを
未然に防ぐことができます。

このように、人間の感情は
外界の危険から自分の身を守る機能と、

円滑な人間関係を築くための
コミュニケーションシグナルとしての
役割を担っています。

感情にはどんな種類があるか?

では、私たちが抱く感情には
どのようなものがあるのでしょうか?

人間の感情は
大きく2つの種類に分けられます。

①基本的情動

「基本的情動」とは
私たち人間に遺伝的に備わっている
根本的な感情で、

環境など外的な要因の影響を受けにくく、
どのような文化圏の人々にも見られる
普遍的な情動とされています。

具体的には、
「恐怖」「怒り」「悲しみ」「喜び」
「驚き」「嫌悪」の6つの情動を指し、

これらの感情は
大脳の内側にある「大脳辺縁系」という
部分の働きによって生じます。

大脳辺縁系は「古い脳」と呼ばれ、
サルやウサギなどの哺乳類はもちろん

進化的に古いワニやトカゲなどの
爬虫類まで共通して持っている
ヒトの脳の中では原始的な部分で

動物が生きるために必要な
本能的な行動や感情を司っています。

そのため、基本情動は
人間以外の動物にも見られることが
あります。

②社会的感情

「社会的感情」とは
人との関わりの中で生じるもので、

人間が社会集団の中で生活していくために
重要な機能を果たしています。

具体的には
「正義感」「誇り」「罪悪感」
「恥」「感謝」「愛」などがあり、

これらの感情は
大脳の外側にある「大脳新皮質」という
部分の働きによって生じます。

大脳新皮質は「新しい脳」と呼ばれ、
進化的に下等な爬虫類などの生物には
ほんのわずかしかなく、

哺乳類でも、ネズミ、ウサギ、サルと
進化していくにつれて、
新しい脳が少しずつ大きくなっています。

そしてヒトになると、脳の半分以上を
大脳新皮質が占めるようになり、

特にその中の「前頭葉」の部分が
大きく発達します。

この前頭葉の働きによって
私たちは理性的な判断や論理的な思考が
できるようになり、

愛や感謝、正義感や罪悪感など
人間が人間らしくあるための社会的感情は
この前頭葉から生じています。

感情は自分でコントロールできる?

このように、一口に感情と言っても、
人間が抱く感情には、

「古い脳」から生じる
他の動物にも見られる基本的情動と

「新しい脳」から生じる
人間にしか見られない社会的感情の
2つの種類があって、

それぞれ、人間が生きていく上で
とても重要な機能を果たしています。

しかし、何かのはずみで感情が暴走し、
それに突き動かされて
衝動的に行動してしまうと、

自らの身を危険に晒したり、
周囲の人との関係を損ねたりと
悪い方向に働いてしまうこともあります。

たとえば、

怒りに任せて上司を殴って
会社をクビになったり、

失恋の悲しみで自暴自棄になり、
ビルから飛び降りたり、

冷静な状態なら絶対にしないことでも、
感情的になり過ぎると
やってしまうことがあります。

このような場合には
自分の感情をコントロールすることが
大切です。

「感情のコントロールなんてできるの?」と
思われるかもしれませんが、
訓練によってできるようになります。

というのも、
先ほど説明した「新しい脳」の中の
「前頭葉」の部分には、

怒りや悲しみといった
「古い脳」から生じた基本的情動を
コントロールする機能があるので、

前頭葉の働きを高めれば
感情をコントロールしやすくなります。

東北大学の川島隆太教授によると、
前頭葉を鍛えるためには

・簡単な計算問題を速く解くこと
・本を声に出して読むこと

この2つが
前頭葉の機能を向上させるのに
有効とのことです。

ですので、感情のコントロールが
上手くできるようになるには、

なるべく普段から
「単純計算」と「音読」をして
前頭葉を鍛えるようにすると良いでしょう。

また、その他には、
「メタ認知」もおすすめの方法です。

メタ認知とは、
自分自身を高次(メタ)の視点から
俯瞰して見ることによって、

冷静な判断や行動ができるようになる
というものです。

メタ認知のやり方については、
他人の目が気になるのはなぜ?」の中で
詳しく説明していますので、

ご興味のある方は
そちらも併せてご覧ください。

以上、感情の役割や種類、
コントロールの仕方について見てきました。

あなたの疑問や悩みを解決するための
ご参考になれば幸いです。