相手の名前を呼ぶとどんな心理効果があるか?

こんにちは。コミュテラスの西垣です。

この記事を書いている西垣の略歴
  • 大手・中小・外資系企業で人事歴20年
  • 5つのコミュニケーション資格を所持
  • 現在はコーチ・コンサルタント業に従事

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このページでは
「相手の名前を呼ぶ心理効果」について
考えてみようと思います。

誰かに久しぶりに会った時、
あなたは何と言って声をかけますか?

「あ、〇〇さん!お久しぶりです」
相手の名前を付けて話しかけるでしょうか?

それとも、

「あ、どうも。お久しぶりです」
いちいち相手の名前を付けたりせずに
挨拶するでしょうか?

ただ相手の名前を呼んで話しかけるか
呼ばずに話しかけるのかだけの違いですが、

それによって
声をかけられた側が受ける印象は
かなり大きく違ってきます。

では、具体的に
どのような違いがあるのでしょうか?

一緒に見ていきましょう。

名前を呼んでもらえるとなぜ嬉しい?

人間は好きな人の名前を口にすると
快感情が生じる特性があり、

また、名前を呼ばれた相手も
喜びを感じる傾向があります。

好きな人の名前を口にすると
頭の中に好きな人のイメージが湧いて、
なんとなく嬉しい気分になるというのは
分かる気がしますが、

人は名前を呼ばれるだけで
どうして喜びを感じるのでしょうか?

それは名前を呼ばれることで
個人として認めてくれていると感じ、

人間が本能的に持っている
「承認欲求」が満たされるからと
考えられています。

※「承認欲求」については
人と比べてしまうのはなぜか?のページを
ご覧ください。

たしかに、さほど面識のない人から
自分の名前を呼ばれたりすると

「名前を覚えてくれたんだ」と
嬉しい気持ちになったりすることが
ありますよね。

これは、名前を呼ばれることで
相手が自分に関心を持ってくれていると
実感することができるため
嬉しい気持ちになるというわけなのです。

特に私たち人間は
自分の名前を無意識に好ましいものと
感じる傾向があり、

平仮名50音のそれぞれに
点数をつけてもらう実験をすると、

自分の名前に使われている文字に
高い得点を付ける人が多いことが
研究により分かっています。

これは心理学で
「ネームレター効果」と呼ばれていて、

実際、我々は自分の名前に使われている
平仮名や漢字、イニシャルなどが
入っている物やブランドを
好む傾向があることが知られています。

このように、多くの人は
自分の名前に強い愛着を持っているので、

人から名前を呼ばれると
とても嬉しい気持ちになるのです。

相手の名前を呼ぶとどんな効果がある?

では、相手の名前を呼ぶと
どのようなメリットがあるのでしょうか?

相手の名前を呼ぶことで
親密な人間関係を築くテクニックのことを
心理学で「ネームコーリング」と言いますが

ネームコーリングには
具体的に次のような効果があります。

相手の注意を引くことができる

人間の脳は自分にとって必要な情報を
無意識に選択して聞き取っています。

このことは1953年にイギリスの心理学者
コリン・チェリー氏によって提唱され、

人はカクテルパーティーのような
大勢の人がそれぞれに談笑している中でも

自分に関連の高いワードが発せられると
その言葉が自然と耳に入ってきて
聞き取ることができることから

「カクテルパーティー効果」と
名付けられています。

たしかに、電車の中でウトウトしていても
自分の降りる駅が近づいて
駅名がアナウンスされると
パッと目が覚めたりしますよね。

これは自分にとって重要な情報を
脳が無意識に選択して
聞き取っているからなのです。

中でも自分の名前は
自分にとって重要で特別なものですから

人は自分の名前を呼ばれると
脳が鋭く反応して
その人に対して注意を向けます。

ですので、ネームコーリングは
相手の注意を自分に引きつけるのに
とても有効な方法だと言えます。

相手から好意を持ってもらいやすい

相手の名前を呼ぶと、その人から
好意を持ってもらいやすくなることも
心理学の研究で分かっています。

アメリカで行われた
ネームコーリングに関する実験によると、

男女の被験者に15分間会話をさせて、
会話の中で相手の名前を呼んだ場合と
呼ばなかった場合の印象を尋ねたところ、

名前を呼んだ時の方が
「フレンドリー」「社交的」
「もう一度会ってみたい」など、

相手に対して親しみや好印象を
抱きやすいという結果が出たそうです。

どうして名前を呼ぶだけで
結果にこのような違いが出るのかと言うと、

人は会話の中で自分の名前を呼ばれると
何となく自分のことを
大切に扱ってもらっている気持ちになって、

「この人は自分に好意を持ってくれている」
と感じるようになります。

すると、相手から何かをしてもらったら
お返しをしなければならないと感じる
「返報性の原理」という心理作用が働いて

「自分も相手に好意を返さなければ」と
無意識に思うようになり、
相手に対して好意的になります。

そして、一度このような状態になれば
あとは「好意の返報性」の連鎖が起こって

お互いが相手に対して
より親密で好意的な感情を
抱くようになっていくというわけです。

つまり、ネームコーリングは
最初に自分の方から
相手に好意を持っていることを示すことで

相手の方からも自分に対して
好意を返してもらいやすくなるという
効果があります。

ネームコーリングの仕方

ここまでの説明で
ネームコーリングのメリットについては
ご理解いただけかと思いますが、

実際、相手の名前は
どのように呼んだら良いのでしょうか?

ネームコーリングは
たしかに相手と親密な関係を築くのに
有効な方法なのですが、

あまり露骨にやり過ぎると不自然で
相手に気味悪がられたり、
警戒されることになってしまいます。

ですので、ネームコーリングに慣れて、
会話中に相手の名前を自然に挟んで
話せるようになるまでは

相手の名前を呼ぶのは
「会った時」と「別れ際」の挨拶の時の
2回だけでもOKです。

というのは、人間の心理には
初頭効果と親近効果というものがあり、

「初頭効果」は、
第一印象など最初に与えられた情報が、
その後のその人の印象に
強い影響を及ぼすことを指し、

「親近効果」は、
最後に与えられた情報で
その人の印象が決定されやすいという
心理効果のことを指します。

つまり、初めと終わりに与える情報は
相手の印象に残りやすいため、

相手の名前を呼ぶのは
「会った時」と「別れ際」の2回だけでも
効果が見込めるというわけです。

特にビジネスシーンでの初対面は
初頭効果の点からも非常に重要ですので、

名刺交換をする際には
「〇〇様ですね。よろしくお願いします」
などと相手の名前を呼んで確認し、

帰り際にもしっかり相手の名前を呼んで
お礼の挨拶をすると良いでしょう。

また、化粧品で有名な
ポーラ化成工業株式会社の研究によると

普段、ファーストネーム(下の名前)で
呼ばれていない女性に対して、
初対面の人がファーストネームで
呼びかけると、

愛情ホルモンの「オキシトシン」が増加し、
ストレスホルモンの「コルチゾール」が
減少するという実験結果があるそうです。

出典:ポーラ・オルビスホールディングス ニュースリリース
http://www.pola-rm.co.jp/pdf/release_20140930.pdf

女性にファーストネームで呼びかけるという
限定的なシチュエーションでの研究ですが、

名前を呼ぶことの効果が
人間の体内で分泌される化学物質の点からも
実証されているのは興味深いですよね。

日本の企業では初対面の女性に対して
ファーストネームで呼びかける機会は
なかなか無いでしょうし、

恋愛などのプライベートな場面でも
堅めの性格の男性には
少々ハードルが高いかもしれませんが、

興味のある方は
ぜひファーストネームで呼びかけてみて
効果を確かめてみてはいかがでしょうか?

 

以上、相手の名前を呼ぶ心理効果について
考察してまいりました。

他人と円滑なコミュニケーションを図って
良好な人間関係を築くための
お役に立てていただければ幸いです。