
こんにちは。人事歴20年の心理カウンセラー、あおいです。
- 家に帰っても職場で言われた一言がよみがえる
- 「もう気にしない」と思うほどあの人の顔が浮かぶ
- お風呂でも寝る前でも職場のことを考えてしまう
仕事の嫌なことは、無理に忘れようとしなくて大丈夫です。「忘れよう」と意識するほど、かえって強く考えてしまうからです。
大切なのは、思い出す回数を減らし、引きずる時間を短くすることです。人事とカウンセリングの現場で見てきたことをもとに、そのための5つの方法をお伝えします。
- 再生の回数を数える
- 「ムカつく」をもっと細かい言葉に置き換える
- あの人を反省させることをゴールから外す
- 黙った自分への「採点」をやめる
- 「次の一言」を一つだけ決める
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家に帰っても仕事の嫌なことを考えてしまうのはなぜ?

家に帰っても仕事の嫌なことを考えてしまうのは、職場で終わった出来事を、頭の中で何度も再生しているからです。
意地悪な同僚に言われた一言や、上司にみんなの前できつく注意された場面は、職場ですでに終わった出来事です。それでも思い出すたびに、そのときのつらい気持ちがよみがえります。
このように同じ場面を繰り返し考えてしまうことを、心理学では反芻思考(はんすうしこう)と言います。
反芻思考が続くと、嫌な気持ちは少しずつ大きくなっていきます。最初は「嫌な人だな」だったのが「あの発言だけは許せない」に、「強く怒られた」だったのが「クビにされるんじゃないか」という不安に変わっていきます。
さらに「もう気にしないようにしよう」と意識するほど、そのことをかえって強く考えてしまいます。思い出すのを止めようとするより、思い出したあとに引きずる時間を短くするほうが現実的です。
仕事の嫌なことを引きずらず、気持ちを切り替える5つの方法
ここからは、思い出したあとに早く気持ちを切り替えるための方法を5つ紹介します。
① 再生の回数を数える

嫌なことを思い出したら「あ、また思い出した。これで今日3回目」と頭の中で数える。
言われたのはたった10秒ほどでも、家に帰ってから何十回も再生していることがあります。引きずるとは、この再生が続いている状態です。
回数を数えても、再生そのものは止まりません。ただ数えた瞬間に、それを外から眺めている自分が生まれます。
少し離れたところから眺めると感情の揺れが収まりやすいことは、心理学の研究でも分かっています。
40代でパートの事務をしている方の例です。書類を戻されるたびに、ベテラン社員からまわりに聞こえる大きな声で「これ、前も言いましたよね」と言われていました。
言われるのは毎回10秒ほどです。それでも更衣室や帰りの電車、お風呂の中で、その場面が何度も再生されていたそうです。
ある夜、寝る前にふと数えてみると「今日、7回目」でした。その瞬間、少し笑ってしまったと話してくれました。再生はその後も続きましたが、一回一回に飲み込まれる時間は少しずつ短くなっていきました。
② 「ムカつく」をもっと細かい言葉に置き換える

再生に気づいたら「私はいま、何を感じてる?」と自分に聞き、浮かんだ気持ちを細かい言葉に置き換える。
再生が長引くのは、気持ちが「ムカつく」「最悪」といったぼんやりした言葉のままだからです。自分が何に傷ついたのかがはっきりしないので、頭は何度も再生して確かめようとします。
そこで、気持ちをもっと細かい言葉に置き換えます。たとえば次のような言葉です。
- 悔しい
- 怖かった
- 恥ずかしかった
- バカにされたと感じた
言葉は最初に浮かんだもので十分です。「悔しいじゃなくて怒りかな」と考え込むと、それがまた新しい再生になってしまいます。
気持ちに言葉をつけることを、心理学では感情のラベリングと言います。感情に名前がつくと、強い反応は次第に静まりやすくなります。
③ あの人を反省させることをゴールから外す

「あの人に分からせたい」と思ったら、ゴールを「自分の生活に戻ること」に置き換える。
嫌なことを何度も思い出してしまう背景には、心の中でくすぶっている怒りがあることが多いです。皆がいる前で強い口調で怒られた場面や、書類を投げるように返された場面は、思い出すたびに腹が立つものです。
一方で、相手はその出来事をほとんど覚えていないはずです。自分がしたことを悪いと思っていないからです。あの出来事を何度も思い出しているのは、あなただけなのです。
「相手に間違いを分からせたい」「反省させたい」と思うのは当然の気持ちです。ただ人事の現場を見てきた立場から言うと、「言い方がきつい」という程度では残念ながらパワハラとまでは言えません。
人格を否定する発言や仕事への実害がなければ、相手が謝るところまで進むことは少ないのが現実です。相手の社歴が長いと、上司に相談したことでかえってこちらの分が悪くなることもあります。
相手を許す必要はありません。ただ、あの人に反省してもらうことをゴールにしているかぎり、この件には終わりが来ません。代わりのゴールは、あなたが自分の生活に戻ることです。
とはいえ、上司に相談したほうがいいのか、自分のケースでは判断しにくいこともあると思います。迷ったときのために、公式LINEで個別相談も受け付けています。
④ 黙った自分への「採点」をやめる

頭の中の声が自分への文句に変わったら「これはあの人の話じゃないな」と気づき、そこで採点をやめる。
再生の中身をよく聞くと、あの人の言葉に自分への文句が混じっていることがあります。
- 「どうしてあの時、何も言い返せなかったんだろう」
- 「一言くらい言い返せばよかった」
これは、あの場で黙っていた自分に点数をつけている状態です。この採点は、何度やり直しても点数が上がりません。あの場のあなたは、もう言い返せないからです。
それに、黙ったのは何もしなかったのとは違います。あなたはあの場で事を荒立てないことを選んだのです。
もし言い返していたら、今度は「あんなふうに言わなければよかった」と再生していたかもしれません。黙ったあなたは、自分の翌日を守ったのです。
⑤ 「次の一言」を一つだけ決める

次に同じことを言われた時に使う一言を、一つだけ決めておく。
夜になると、言い返し方を頭の中で何度も作り直してしまうことがあります。
- 「また言われたら、今度はこう言おう」
- 「いや、それだと角が立つな」
どれだけ考えても、完璧な答えは出てきません。しかも考えているあいだは、家にいるのに頭の中ではずっとあの人と話している状態です。
そこで、次に使う一言を一つだけ決めてしまいます。事務的な言葉で十分です。
- 「はい、確認します」
- 「どこを直せばいいか、教えてください」
2つ浮かんだら、短いほうに決めてください。この一言は、あの人を言葉で押し返すためのものではありません。頭の中で続いている作業を終わらせるためのものです。
考えないようにしてはいけない場面もある(会社への相談の仕方)
ここまでの方法は、答えの出ない問いを何度も考えずに済むためのものです。一方で、次のような場合は考えないようにするのではなく、対策を立ててください。
- 人格を否定するようなことを言われている
- 自分にだけ連絡が回ってこないなど、仕事に実害が出ている
- それが続いていて、変わる気配がない
③で、上司に相談しても相手が謝るところまで進むことは少ないとお伝えしました。ただしそれは、相手を反省させるための相談の場合です。あなたを守ってもらうための相談なら、会社の対応は変わってきます。
「あの人を注意してほしい」と頼むと、会社はどちらが正しいかを判断しなければならず、対応が難しくなります。そこで、「この会社で働き続けるために、どうすればいいか相談したい」と伝えてみてください。
こう伝えれば「あなたが働ける形をどうつくるか」という話になり、会社も対策を立てやすくなります。人事をしていた私から見ても、働けなくなる人が出るのは何より避けたいことです。
相談したあとに対策を立てるのは、あなたではなく会社です。「会社にどう切り出せばいいか分からない」「今の状況で相談していいのか迷う」という方は、公式LINEからお気軽にご相談ください。
次のような状態が続くときは、一人で抱え込まないでください
- 眠れない日が続く
- 激しい動悸がする
- 涙が止まらない
- 日常生活に支障が出ている
心療内科や精神科などの医療機関に相談することをおすすめします。
- 反芻思考について:Nolen-Hoeksema, S., Wisco, B. E., & Lyubomirsky, S. (2008). Rethinking Rumination. Perspectives on Psychological Science, 3(5), 400–424.
- 「考えないようにするほど考えてしまう」について:Wegner, D. M., Schneider, D. J., Carter, S. R., & White, T. L. (1987). Paradoxical effects of thought suppression. Journal of Personality and Social Psychology, 53(1), 5–13.
- 少し離れたところから眺める見方について:Kross, E., & Ayduk, O. (2011). Making Meaning out of Negative Experiences by Self-Distancing. Current Directions in Psychological Science, 20(3).
- 感情のラベリングについて:Lieberman, M. D., et al. (2007). Putting Feelings Into Words: Affect Labeling Disrupts Amygdala Activity in Response to Affective Stimuli. Psychological Science, 18(5), 421–428.
まとめ
家に帰っても職場のことを考えてしまうのは、終わった出来事を頭の中で何度も再生しているからでした。引きずる時間を短くするための5つの方法をおさらいします。
- 再生の回数を数える
- 「ムカつく」をもっと細かい言葉に置き換える
- あの人を反省させることをゴールから外す
- 黙った自分への「採点」をやめる
- 「次の一言」を一つだけ決める
思い出すこと自体は止めなくて大丈夫です。引きずる時間が少しずつ短くなれば、オンとオフを分けた毎日に近づいていくはずです。
焦らず、ご自身の心と体を守りながら取り組んでみてください。



